藍染めは美しい青い色が染まるイメージがありますが、実は他の草木と組み合わせることで、たくさんの色彩を生み出すことができることをご存知でしょうか。
日本の伝統的な色彩には、実は藍染めが混ざっていることが多々あります。
草木染めは、植物の根や茎、葉、花などに含まれた色素を適切に抽出・調合することで、豊かな色彩を作り出すことができます。
自然界では「青」に染まる染料は少なく非常に貴重だったため、藍染めは重宝されてきました。
今回のコラムでは、草木染めと藍染めが組み合わさった美しい日本の伝統色をご紹介します。
「千歳緑(せんざいみどり)」
暗く濃い緑色。藍、ヤマモモ(アルミ媒染)で染色。
決して変わることなく緑の葉をつける松の様子を表した色。
平安時代にはすでに存在していたとされている。
「藍海松茶(あいみるちゃ)」
濃く黒ずんで藍みを帯びた黄緑色。
藍、ヤマモモ(アルミ+鉄媒染)で染色。
江戸前期に染められていた色。
「二藍(ふたあい)」
澄んだ紫色。
藍の生葉染めと紅花を重ねて染色。
『源氏物語』では、“光源氏”が息子の“夕霧”に対し「紅みの強い二藍では軽く見られる」と嗜める場面がある。
「中緑(なかのみどり)」
緑色。
藍の生葉染めとキハダ(アルミ媒染)で染色。
平安時代にはすでに存在していたとされている。
※画像の色はイメージです。実際の色とは多少異なります。
このように、日本の伝統的な色彩には「藍」が多く組み合わされていることが分かります。
特に緑色は藍が使われていることが多いです。なぜなら緑色の染料も貴重だからです。
自然界の多くの葉は緑色なのに、そこから緑色の染料を抽出することは困難です。
草木染めは、植物の外見からは想像もできない色に染まることが魅力の1つ。
草木染めを通して、普段は見えない植物の「内側」にある色を引き出すことができるのです。
日本の染色技術は、長い歴史と伝統を持ちながら現在まで脈々と受け継がれ、美しい色彩と繊細な技術は今もなお人々に愛され続けています。
藍染めと草木染めの魅力を知ることで、自然とのつながりや伝統への理解が深まったのではないでしょうか。
ぜひ、豊かな染色文化にこれからも触れてみてくださいね。