2023.08.14

お知らせ

1周年感謝祭のトークイベント「小さな創造力を繋げるピクニック」レビュー

 先月の1周年感謝祭で行われたトークイベント「小さな創造力を繋げるピクニック」。
 当日に参加できなかった方々にも、このブログから様子をお伝えしたいと思います。
 レポーターは山本愛子です。
 トークイベントのゲストは、キュレーターの青木彬さんと、地域プロジェクトマネージャーの熊倉聖子さん。
 青木さんは、藍染結の杜のオープン記念にも関わってくださり、関東を中心に企業や自治体と協働したアートプロジェクトを企画されています。
 熊倉さんは、地域プロジェクトマネージャーとして美瑛町に移住し関係人口の創出に取り組んでいます。

1周年感謝祭のトークイベント

 藍染結の杜のカフェスペースにて、ワンドリンク制で会がスタートしました。
 まずはトークのチェックインとして、館長の水野里紗さんからのご挨拶と施設案内。
 その後、参加者の皆さん1人ひとりに簡単な自己紹介をしていただきました。
 参加者は13名。
 自己紹介を聞いていくと、アート関係の方、東京藝術大学の学生兼地域おこし協力隊、お医者さん、農業研修に来ている方、ワークショップ企画プロデューサー、ヒューマンテクノロジー研究家、ダンサー、などなど、多種多様な参加者に主催側がびっくり。
 北海道外からの参加者の方が多かったのが印象的で、関係人口がまさにここから生まれているように感じました。

藍染結の杜のカフェスペースにて

 自己紹介が終わり、お二人のトーク(話題提供)の時間。
 お二人のこれまでの活動の事例紹介を頂きました。
 まずは青木さんの活動事例紹介。
 インディペンデントキュレーターの青木さんは、普段は神奈川県在住、東京の墨田区を拠点にしながら、全国各地の企業や行政、アーティストらと協働したアートプロジェクトを企画しています。
 キュレーターというと一般的にはアートの現場に携わる人、のような想像をしますが、青木さんの場合、必ずしも「アート」の分野内に留まらず、まちづくりや福祉などの異なる分野との協働が生まれるとのこと。
 様々な領域とアートがつながっていく中で、アートに限らず様々な場所にある「創造力」を実感していったそうです。
 今回のトークイベントのタイトル「小さな創造力を繋げるピクニック」も、青木さんが名付けたタイトル。
 「小さな創造力」とはなんでしょうか。
 分野を超えて様々な領域に存在する、ちょっとした工夫や視点。当たり前すぎて特に名付けられていないようなもの、なのかもしれないと感じました。

お二人のトーク(話題提供)の時間

 また、青木さんは「セツルメント運動」という19世紀のイギリスから始まった社会福祉の運動について関心を持ちリサーチされています。
 昨年度には自身の法人の拠点である東京都墨田区で、セツルメント運動(地域福祉)とアートの繋がりを考える展覧会を企画・開催しました。
 キュレーターとしてアートの分野での実践を続けながらも、「アート」と呼ばれなかった切実な創造力に向かっていく振る舞いに、新たな創造力を見出す可能性を感じます。
 この春からは社会福祉士養成課程に在籍されているようで、今後の活動がさらに楽しみです。

青木さんの活動事例紹介

 続いて、熊倉さんの活動についての事例紹介では「わたしの小さな創造力」というテーマで、彼女の経歴と活動についてお話していただきました。
 熊倉さんは北海道出身で、20代の頃からアートマネジメントに関わり、東京、アメリカ、ドイツなどで幅広い活動を行いました。
 30代に入り、京都や鎌倉に住む中で、子育てと介護の両立によって社会問題が身近に迫ってきたと語られました。
 そして現在40代で美瑛に移住し、人と人の交流や対話の場の創出に可能性を見出し、ファシリテーターとしての活動を始められました。

熊倉さんの活動についての事例紹介

 なぜ美瑛に移住されたのか、その一つとして、祖父母が美瑛の農家で美瑛にルーツを持つということがあるようです。
 美瑛に生える「ケンとメリーの木」という有名なポプラの木がありますが、この木は、なんと熊倉さんのひいお爺さんが植樹したものだそうです!
 昭和47年(1972)に日産のスカイラインのCMにも登場した、美瑛の丘を象徴する風景の一つで観光客にも人気です。
 ユニークな名前はCM「ケンとメリー」の登場人物にちなんだもの。
 元々は、畑の境界線目印として植えられたそう。木の歴史から、美瑛の様々な資源や人の営みをご紹介いただきました。
 拓真館、レストランSSAW、農業、など。改めて美瑛の豊かさを感じました。

ケンメリの四季

 『すべては1人から始まる』著書のトム・ニクソンの紹介もしていただきました。
 トム・ニクソンは、ティール組織と呼ばれる組織モデルを提案しています。
 このモデルを基にして、美瑛町に存在するさまざまな資源やソースをどのように活用できるかについてお話しました。
 ティール組織は、「やりたい」という個人の意欲を大切にし、その人がソースとなる組織を作り上げる考え方です。
 一方、従来のピラミッド型の組織では、役職や立場によって個人のソースへのアクセスが制限されたり、変化が難しかったりする課題があります。
 美瑛町の様々な資源も、ティール組織の視点から考えると、異なる領域が柔軟につながっていく可能性を感じました。
 これに加えて、多くの土地で場づくりに携わってきた熊倉さんの経験も共有され、貴重な機会となったと感じています。

ティール組織と呼ばれる組織モデル

 お二人のトーク後は、イベントタイトルにあるように「ピクニック」をしようということで、青の丘に登って頂上でつめたい藍茶を飲みながらのピクニック。
 私、山本愛子の制作した野外作品《丘のまたたき》という旗の作品について紹介し、みんなで藍染のベンチに座ってゆったりと風景と作品を眺めました。

青の丘でピクニック

 トークイベント全体を通して、イベント内で「話す人」と「聞く人」のシンプルな分かれ方だけにならないような、ちいさな工夫が凝らされた企画だったと感じます。
 実際に、イベントのクライマックスでは、参加者の一人がギターで歌を披露し、路上ライブのような雰囲気で終了しました。
 こうした創造力が生まれるためには、話すだけでなく歌ってもいい、座っていても踊っていてもいいといったような、ひらかれた場づくりが必要です。
 それは一見ゲリラ的な感じがしますが、実は蓄積された経験値から創られた場づくりなのだと思います。
 最終的には参加者同士も「小さな創造力を繋げるピクニック」というテーマを象徴するように、個別に話し込み、繋がりをつくっていき「また会いましょう」という言葉での解散となりました。
 来年もまた、こんな素敵なイベントができたらいいなという期待が広がる、素晴らしい一日でした。
 青木さん、熊倉さん、本当にありがとうございました!

レポート:山本愛子

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